第7課 日本語の特長 2
〜「(値段が)高い」=expensiveでない理由〜
(著・櫻田淳一郎 監修・鈴木明JUMPsystem主催)
これまで説明してきたとおり、日本語の活用は3種類である。 @ verbal A adjectival B nominal + copula「だ」 それぞれの活用を、distal style(敬体)と direct style(常体)の両方で、perfective(完了形)imperfective(未完了形)、positive(肯定)と negative(否定)について考えるが、JUMPsystemでは以下の表を利用している。
※これまでverbalのdirect style(常体)以外の活用について説明を終えている。(verbal、direct styleについては、後述の予定) さて、もう一度、日本語の特長を英語と比べることによって考えてみよう。 例えば「高い(値段が・以下全て)」を英語に訳すとどうなるだろうか? 和英辞典を使っても、一般的に考えても「高い」=expensiveとなるが、実はこれは間違っているのである。 理由は活用である。 言うまでもなく、日本語の「高い」は次のように活用をすることができる。
一方、expensiveはどうだろうか? もちろん、expensiveだけでは活用することができず、be動詞を使うことになる。 高い = it is expensive. 高くない = it is not expensive. 高かった = it was expensive. 高くなかった = it was not expensive. (※ ここでは仮にitを主語とする) つまり、「高い」=expensiveとするのは間違いであり、本来は「高い(値段が)」=is/are expensiveとするべきである。 さて、ここでさらに『文』について考えてみよう。 『文』を定義するのは難しいが、ここでは『文=主語と述語があること』とするが、そうすると、日本語では「高い」という、それだけで文として成立していることになる。 理由は、今まで述べたように「高い」が活用することと、日本語では主語を省略することができるためである。(もちろん英語expensiveだけでは、文として成立しない。expensiveは活用しないし、英語では主語を省略できないためである) 同様の理由で、「食べる」等のverbalも「先生だ」等のnominal + copula「だ」も、それだけで文として成立する。 以上のように「高い(値段が)」=expensiveは間違っており、そういう意味で、日本語と英語を=で結ぶのは慎重にしなければならない。 英語と日本語は全く違う体系を持った言語であるためである。 さらに英語と日本語では品詞が全く違ってしまう例を挙げておこう。 日本語・・(私は)ペンがほしい。 (私は)日本語を勉強したい。 英語・・・I want a pen. I want to study Japanese language. 上の例文の「ほしい」「したい」とwantに注目してみよう。 英語wantは動詞であるが、日本語「ほしい」「したい」は何だろうか? 「ほしい」「したい」の活用を考えてみると、それが何に当たるか、一目瞭然である。 ほしい ほしくない ほしかった ほしくなかった したい したくない したかった したくなかった 学習室4を見るとわかるように、これはadjectivalの活用であり、よって「ほしい」も「したい」もadjectivalであると分かる。 つまり英語では動詞とされることが、日本語ではadjectival、即ち、形容詞の仲間として分類されるのである。 重ねて述べるが、日本語と英語は全く違う言語である。 もちろん英語に限らず、一つ一つの言語には違いがあるが、特に英語に代表されるインド・ヨーロッパ語属と日本語(ウラル・アルタイ語属)との間には、大きな違いがあることを認識/意識すべきである。 音的要素、漢字の有無等難しい要素は多々あるがこの文法システムの違いが英語圏の人達が日本語を学ぶ時の一つの高い壁となっている所以ではないだろうか。 |
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